ダボス会議って何よ
麻生さんがダボス会議に行ったそうだ。外交で点を稼ぎたい状態なんだろうね。日本語で挨拶するものだから、またぞろ誤読系のネタにされていたらしい。演説の映像を見たけど、あれは誤読というよりむしろ忙しすぎてテンパっている状態に見えた。
でも、ダボス会議ってどうなんだろうね。今までは、持ち上げ報道があまりに胡散臭かったのでシカトしていたけど。金持ってる企業経営者が集まって、社交の場*1にしながら、それだけじゃ格好つかないので偉い人に講演してもらったり*2、ちょっと社会提言してみましたってだけなんじゃないかな。それをダボスでやって、集まる人がお金持ちばかりだから、注目を浴びてしまうだけなわけで。某会議所の何とか大会とか、何とか会議とか、そういうのと有意差があるとは思えない*3。
まあ、世界的なリセッションで金の切れ目となって、今年あたりは様変わりしてるのではないかと思っていますが、そういう報道はまだ見ていないから、影響が出るのは来年あたりかな。それとも(休暇を兼ねて)現地取材に行った人たちが、今向こうで雑感記事まとめているところかな。
トヨタと為替の件
昨年末はちょっとトヨタに対して厳しすぎることを書いてしまったと反省*1。
何故急にあんなに赤字になったのか、銀行の人と話をしていたらすっきりしました。当時は日米に金利差があったので*2、先物予約のレートは輸出側はプレミア、輸入側はディスカウントになっていたわけです。で、輸入側はディスカウントになるので予約をガンガンしていて、輸出側はプレミアを嫌ってオープンにする傾向があったと。言われてみれば、自分たちも輸入側はそれなりに予約する事もありますが、輸出側は全くしてませんでした*3。
というわけで、トヨタが仮に北米・欧州向けの輸出に対して為替予約を全くしていないとすると、全売上高を20兆円*4、北米・欧州の比率を7割程度として、14兆円くらいが為替リスクに晒されているわけです。ここで為替が1%(大体1円)変動すると1400億円も受け取り額が変動するわけで・・・。予算修正では一ヶ月あたり約120億円×月数×為替変動率の影響が出るわけですね。20%程度円高が6ヶ月継続と予測したら、1兆4400億円。そりゃもう大騒ぎで当然でしょう。先物予約ゼロだとこれくらいのインパクトが考えられるという事ですね。
結論から言うと、為替差損の赤字と、北米急減速での生産調整は、同時に起きていた別の現象*5だったという事なのでしょう。当時の報道などでは、両者を絡めて説明していたように思います。僕が両者をごっちゃにした認識をしていただけかも知れませんが、それゆえに何故売上が2兆円減ったときに利益が2兆円も消えてしまうのか、おかしいと思ってしまったわけです。
で、ここからは日本全体の話なのですが、輸入側企業は予約しているので円高の恩恵が遅れ、輸出側企業はオープンなので円高の損失が速攻で出るわけです。日本中でトータルするとそういう傾向が出てくるんでしょうね。こういう非対称は、あまり想像したくない・・・。
道端の朗報悲報
昨日は東京出張で、帰路日本橋界隈をフラフラと歩いていたら*1、某国中央銀行に勤めている大学時代の友人に道端でぱったり会いました。彼はいきなり「お前のところ景気はどう?」と偉く心配そうな顔で質問してきて、「僕らのところは超遅行型だから、これからじゃないかなぁ」みたいな話をしたわけです。
些細なことですが、公式な発表だけでなく、個人ルートでも某国中央銀行の中の人が結構ホンキで危機感を持っている事が確認できて、ちょっとだけほっとしました*2。しっかり頼むよ。
一方、一昨日の夜は名古屋にいて、新幹線口の方のホルモン屋で一杯ひっかけていたのですが、その周辺*3には結構たくさんのホームレスな人が寝っころがったり、フラフラ歩き回ったりしていました。ちょっとだけ身の危険を感じてしまった。
大型台風上陸
昨日、東京で業界の集まりがあったわけですが、目の前に見えている明らかな景気後退に対して「我々も改革をしなければならない」なんて言う人がいて、心の中でちょっと毒づいていました。
今回の景気後退は喩えるなら、今は大型台風の直撃を受けているようなものです。それぞれの家によって、事前に台風の備えに差はあると思うけど、台風が来てから、慌てて屋根に上って修理を始めたり、食料が足りないからとカップラーメン買出しに出かけたり、そんな事をしたらかえって危険なだけですよね。こういう時は、せめて立て付けの悪い所を若干補強する程度にとどめて、雨漏りがしたらバケツを並べて、できるだけ部屋にこもっておとなしく台風が過ぎるのを待つだけです。その時点で倒壊するような家に住んでいたら、諦めて近くの公民館に逃げ込むしかありません。何せ天災ですから。
というわけで、今までのビジネスモデルが間違っていたわけではないと言う自信があれば、変に改革なんていうリスクを犯す必要はないと思います。急に改革とか言い出すのは自信喪失の裏返しにすぎない。台風が来たと思って、台風一過を待ちましょう。というのが、22日のエントリーでした(補足)。
自動車産業も、「ガソリン車時代の終焉」だとか、「自動車というビジネスモデルが破綻している」とか言う人がいますが、そんな大げさな話じゃないと思うんですよ*1。一方、国内自動車メーカーも工場を一時操業停止しているわけでして。北米・欧州市場という全体の70%くらいの市場が金融危機で車を買えない情況に「突然」なったわけです。製造ライン上で粛々と生産されて続けていた*2自動車の在庫が大渋滞を起こしてしまったので、生産調整に入ったという状況なわけです。要するに在庫循環です*3。サプライチェーンがしっかりしてるトヨタあたりは在庫バッファとして使えるストックヤードをあまり持っていないんじゃないかな。それで出口が詰まったら入り口から全部停めないとあふれちゃう*4。昔は一般道を信号で走ったり止まったりしていたのが、今の時代だと普段は高速道路を巡航していて、目の前にハザード点滅している渋滞末尾が見えたので急ブレーキかけたような情況になっているのかなと思う次第です。
とはいえ、これが単なる在庫循環で終わるのか、それとも、更に進んでいわゆるデフレスパイラル様の症状を呈するのかは、まだ未確定です。現在はどちらかというと派遣のカット・工場の停止など比例費の削減です。工場の閉鎖*5、本社機能の削減、その他諸々、売上規模が縮小していく前提で製造業が固定費の削減を進めていくと、スパイラル化していく可能性があります。在庫循環が終了した時点でちょっと操業率を下げた程度で生産が再開できるのか、あるいは顧客の購買力が早期に回復すると判断できるのか、あるいはその期間が長引いて自社が倒産するリスクが生じてくる事を見越して先に生産設備の廃棄に入るのか、その辺が分かれ目かなと思います。つまりは、まあ、金融危機がどこで底を打つのかですね。
こういう時こそ、金融緩和・特別融資の類の金融面での対応はもとより、需要減が一定期間で収まる事を納得させるための財政面の対応が必要になるのかなと思います。ぶっちゃけケインズ「一般理論」そのままですね*6。
Yes, I'm alive!
僕の業界は超遅行型なので、不況の影響が出てくるのはこれからなのでしょうが、そろそろちらほら顧客業界の最大手の信用問題なんてのが裏でこそこそ話し合われるようになってきています。多分、非常に狭いとはいえ弊業界内で一番最初に「あそこはビジネスモデル的に見て、急に危なくなるかも知れない」と言い出したのは僕なので、周囲があわせてくれているのかも知れませんが・・・でも総合商社さんなんかはもっと早くからわかってるんだろうなぁ。メガバンクさんなんかは良く知ってるんだろうなぁ。きっと。
年明け早々新年賀詞交歓会なるものもいくつか行ったのですが、まあ「お先真っ暗」ネタばかりで萎える事しきり*1。そんな中、某党若手議員の方は意図的な漢字誤読をネタにして挨拶していたりして、「おいおいどっちを見て仕事をしているんだ」と心の中で毒づいた次第であります。あそこには消費税増税の反対だけやってて欲しい*2。
さて、そんな中で、極めてローカルな新年会に行った時の事。多分その筋の方なら必ず名前を知っている自動車の部品メーカー*3の会長さんが冒頭の挨拶をされました。その方は多分70〜80歳くらいかな。曰く
「こんだけ生きていれば、30年に1度くらいは、こんな事もあります(ガハハw)」
いや・・・豪快に笑い飛ばしていました。「あがいてあがいて、生き残れば何とかなるさ。いつもの事だよ。」と言うような話でした。思い切り景気先行指数の業界だし、連日のマスコミ報道見ているとまさにお先真っ暗の典型の業界なわけで、何を言うんだろうと思って見ていたんですよ。どんだけ厳しい話をするかと思っていたわけです。こういう人にこういう事を言われちゃうと説得力ありますよね。少なくとも過去に積み上げてきたトラックレコードがありますから。*4
ブログでも内心でも、合成の誤謬が・・・貯蓄のパラドックスが・・・と思っていたりして、若干思考が分裂気味になるときもありますが、それはそれ。お国にちゃんとやってもらうしかないわけで、こちとら民間で勝手にやらせてもらうしかないなぁと、危機に備える意識を強くした新年でありました。
P.S.
しかしなんか、色々な評論家の話を聞いていると、民間(個人も法人も)が自己責任でなんとかすべきことと、国でまとめてやってもらうべきことの、区別がちゃんとついていない人が多いなぁと思ったりもする。皆きっと我田引水したいんでしょうね*5。
「おカネを使う」ことそのものへの「罪悪感」を解消する伝統的方法
すなふきんの雑感日記「おカネを使う」ことそのものへの「罪悪感」より
ましてや政府から「バラまかれた」*1カネなど「自分で稼いだ金でもないのだし使えるか!」あるいは「悪銭身につかず」に近い感覚さえあるのかもしれない。
是非是非、「悪銭身につかず」で使い切ってもらっちゃいましょう。宵越しの銭は持たないように。
という突っ込みがしたかったのですが、コメント欄が無かったので、トラックバックで。
さて、こういう場合、日本の伝統的解決策は、「お祭り」であります。炊き出しがてら「芋煮会」みたいなのを盛大に行って、夜遅くまでどんちゃんやったら、どうでしょうか。山形県人同士で喧嘩を始めないように、鍋は二種類用意しましょうw
高校生の政治経済のおさらい
確か政治経済の授業だったと思うけど、「経済は発展すると、第一次産業から第二次産業へ、第二次産業から第三次産業へ比重が移っていく」と習いました。先ほどwikipediaで調べたらペティ=クラークの法則と呼ばれているそうです。習ったのはもう20年以上昔の話です。ところがテレビ・新聞や日常会話で出てくる話を聞いていると日本は製造業が中心で、製造業の発展が日本の成長の原動力だと力説する人が多い。そこで、実際のところがどうなのか、ちょっと調べてみました*1。
さて、産業分類別のGDPですが、これが載っているGDP関連の統計は県別経済計算しか見つかりませんでした。これはかなり速報性が低い統計でして、現時点では2005年までの分しか見当たりません。中身は、一応、暦年の実質値のようですが、各県の値の集計が全国にならないとか、色々癖がありそうです*2。で、その結果は、
なんてグラフが書けました。このグラフからは
1.日本における第三次産業の比率は70%以上(2005年時点で73%強)
2.この比率は現在も上昇中
という2点が読み取れると思います。やはり、ぺティー=クラークの法則は成立しているようです*3。
続けて表を眺めていたら、第三次産業の成長率がGDP成長率に与える影響が大きそうな気がしてきました。そこで、寄与度分析をしてみます。
ありゃりゃ・・・。
1.景気拡大期は、第三次産業の増加の影響が大きい
2.景気後退期は、第二次産業の悪化の影響が大きい
3.第三次産業は、景気後退期もほとんど前年対比を維持している
というわけで、構造改革などやろうとやるまいと日本は順調に経済のソフト化が進んでいる真っ最中のようです。
特に目を引くのは2001年のマイナス成長。ITバブル崩壊の頃*4ではありますが、同時期に日銀もゼロ金利解除*5をしていました。タイミング的には利上げがクリティカルヒット*6になっちゃったようにも見てとれますが、国民経済計算の方をざっと眺めた感じでは輸出減少分*7と住宅投資の減少*8のコンボのようであります。
さて、ここまでで思ったのは、2006-2008年が早く見たいという事です。日銀のゼロ金利解除とサブプライムショックの影響がどう出てくるのか。特に2008年末からは第二次産業が壊滅的な事になっているでしょうしね。「丑年は良い時は激しく良いが、悪い時は激しく悪い」と言うネタを、先日の某賀詞交歓会の挨拶で聞きましたが、今年はやっぱり後者でしょうね。悪化の具合は2001年を参考にして・・・どのくらいの倍率を考えればよいのやら。日銀がゼロ金利解除したのではなく、遅いとは言えゼロ金利に復帰したタイミングだというのが救いではあります。どうせお互いに景気が悪いのですから、テーラー=溝口介入のような事を、日米英欧同時に行って為替の影響を相殺しながら、非伝統的なルートで世界規模で金融緩和をするという手もあるかも知れません*9。
P.S.
さて、こういう話をすると、いかにも第二次産業が重要ではないように捉えられてしまうかも知れませんので、若干の予防線を。恐らく経済に強い関心を持っている方の多くは、その関心のきっかけは、株式による資産運用*10だと思います。株式市場においては、「付加価値が大きく経常利益率が高い」、「投資案件が多く資金調達の頻度が高い」「技術革新などで簡単に企業の栄枯盛衰が起きる」「景気感応度が高い」という事から、製造業は第三次産業と比較して個々の企業に対するニュースの数と、そのニュースに伴う株価の裁定頻度が高いため、より利益を得ようとした際には相対的に重要である事は疑う余地もありません。一方第三次産業系は、いわゆるディフェンシブ銘柄が多く、経済危機、敵対的M&Aの対象となる、粉飾決算、そして無理やりな拡大路線の発表でもしなければ、ほとんど脚光を浴びないのは、当たり前の事です。その点を否定するつもりは全くございません。
ただ、マクロ経済動向を見るにあたっては、それだけでは片目を瞑っているようなものじゃないかなと、思ったりする事があります。目的が違うので、同じ数字でも着目する範囲が違うという事ですね。
もう一つ予防線を張っておくなら、産業分類というのは、コーリン・クラークさんが当時*11の産業を恣意的に分類したものでして。IT産業や公的部門、銀行などが第三次産業に全て入っていたりして、ある意味「その他に該当する産業の種類が増えて、いつの間にか73%になっちゃいました。」と言っているようなものでもあります。というわけで、この話はこの辺で。
(追記)
econ2009さんのEconviews-hatena ver.∞にて「岡田靖「目立つ輸出産業の急速な調整、懸念される危機感のギャップ」(インサイトコラム)を読む。」という記事がアップされています。
「97年危機」の新規求人数の減少に大きく寄与していたのは製造業、建設業がメインであったのに対して、今回の景気後退局面で特徴的なのは圧倒的にサービス業のウエイトが高いという点である。規模別に比較するとこの新規求人数の減少は29人以下を中心とした小規模事業所において生じており、この点は「97年危機」と同様だが、今後一定のラグを伴いつつ、製造業の生産停滞がサービス業に波及することでサービス業において雇用削減の動きが本格化し、景気後退が広く実感されるようになる可能性が高いことを統計指標は示唆しているのである。以上のような認識に立ってみれば、生活不安除去のための対策といったものではなく、大規模な需要創出策を早めに発動させることが必要であることが理解できるだろう。
との事で、今回は「第三次産業は悪くても前年維持」とは言えないかも知れないと思いました。というか、全く楽観できませんね。