物価が上がると生活は楽になる?

昨今の石油価格の上昇は、インフレではなく相対価格の調整であるという事は当然の事として、同時に「物価が上がると生活が苦しくなる」という主張も当たり前のようにされています。僕は論調にとても違和感があって、ためしに調べてみました。

CPI 賃金上昇率
1991 2.8 4.4
1992 1.6 2.0
1993 1.3 0.3
1994 0.7 1.5
1995 -0.1 1.1
1996 0.1 1.1
1997 1.8 1.6
1998 0.6 -1.3
1999 -0.3 -1.5
2000 -0.7 0.1
2001 -0.7 -1.6
2002 -0.9 -2.9
2003 -0.3 -0.7
2004 0.0 -0.7
2005 -0.3 0.6
2006 0.3 0.3

*1

実は、以前に1980〜2000くらいの表も作ったのですが、今見ると数値の採り方にちょっと疑問がありまして、かといって当時の数字は既に総務庁統計局のリンクが死んでいる事もあって、再度作り直しました。1980〜1990頃は作っても右上の灰色方向に伸びていくだけだと思います。


さて、どう見ても、物価上昇率が高い時代の方が賃金上昇率も高いようです。また、デフレとなった1999年以後は名目賃金の低下と物価の下落がほぼ平行して実質賃金が下がらなくなるケインズ的な状況をイメージしていたのですが、実質賃金は若干上がり気味でした。

この数字は事実として「何故物価が上昇していた時代は賃金の上昇率が高いのか?」という事を考えた方がよさそうです。パッと思いつくのは、
・物価が上昇する=投資が活発=労働生産性が上昇する*2
・労働供給は価格非伸縮的(価格弾力性が低い)なので、最も逼迫する市場は労働市場である
というものでしょうか。



また、逆に「何故物価が下落していた時代は賃金の下落率が低いのか?」ともいえます。あんまり考えたくはないのですが、賃金の統計からは失業者の分のカウントが抜けているからでしょうか。

この問題、もうちょっと考えてみたいですね。

*1:賃金上昇率は毎月勤労統計調査より5人以上事業所の現金給与総額、CPIは1991年はH17基準以前の値を流用

*2:資本の生産性が落ちる事のバーター