毒餃子パート2

中国の方で「買った奴が悪い」という意見が出ているようですが、感情的になってはいけません。彼の国の商慣行はそうなのですから。僕は彼らの行動を肯定するつもりはありませんが、中国から仕入れをしている企業は、リスク要因として把握して対策を考えておくべきです。

中国(共産中国の事ではなく、華僑とかまで含めた中国系のという意味)の会社組織は、オーナーが董事長、社長が総経理です。総経理は社長というより大番頭かな。董事長が旦那みたいな。
現金主義が強いお国柄、総経理董事長にお金のやりとりを任された人という位置づけで捉えるべきです。商品の買い付けは担当者が行っても、それに対してお金を払うのは総経理です。担当者が商品を買い品物が届いたら、品質をチェックし価格の交渉をやり直します。というか、細かい傷を探して、商品を受け取った上で「お金を払わない」交渉をします。売るほうも、傷物から売りますし(グレシャムの法則もどき)、価格も事後値引きに対する安全マージンとっていたり、まあ非効率的ではありますが、お互いに相手を信用していないのだから仕方がありません。売る方は、傷物を高く売りつけたら成功。買うほうは傷物を見抜いて商品だけガメたら成功という感覚なのです。こういう商慣行の国では、傷物をうっかり買ってお金を払ってしまうような総経理董事長から「クビ」されます。必死です。

一方、現金主義が徹底していますので、賃金労働者に対する給与も総経理なり現場監督が手渡しします。給与を手渡しする人が「ボス」で、賃金労働者はボスの言うことはちゃんと守ります。「言われていない事に対して想像力を働かせる事がない」だけです。それゆえ、日本ではPTSDだ労災だの問題だけではすまないくらいに、徹底的に賃金労働者を叱ります(体罰は見たことがないけど)。叱られる側も、賃金をもらう代償として叱られているのをわかっているので、言う事は聞きますし、叱られる事はぜんぜん気にしません。それができない人(日本人の感覚では「札びらで言う事を聞かせる」事はなかなかできないよね)が監督すると現場はグダグダになります。それゆえ、東南アジアでは工場長などに華僑が採用されるのです。

ツボさえわかれば、こういう感覚の人たちの管理は意外と簡単なんです。文化の差だからと排除していたら、たぶん孤立していくしかありません。何をすれば、相手がこちらの言うとおりに動くのか考える事が大事だと思います。


また、最初の商慣行の話に戻ると、こういう商慣行の下では「買ってやらない」「売ってやらない(商品を引き上げる)」の応酬になりがちです。買う方だって売ってもらえない事には商売がなりたたないので、お互いにある一線で名誉をたもったまま引きます。
最近中国からの輸出食品が嫌がらせのごとく全量チェックとなって、事実上の輸出停止状態になっています。彼らにしてみると、「そこまで言うんなら売ってやらない」という交渉が始まったわけです。まともに運営していた工場まで巻き添えになってしまったわけです。食品衛生管理の未発達というのは、中国全体の問題ではありますが、突っつき方を間違えるとこうなっちゃうということで。
たぶん、こういう文化面での摩擦は、はるか太古から日本と中国の間でずっと起きているのでしょうね。


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