原油価格とWTI先物への資金流入

カテゴリに困っちゃった。本当は金融みたいなカテゴリなんだろうけど、僕は素人さんなので。

普段は流通の末端に近いところにいるので気にしていなかった原油価格だけど、皆さんご存知の値上げ値上げで最近はちょっとは勉強会みたいな事をするようになりました。メーカーさんも値上げ理由をおおっぴらに説明できるので、さらに上流のメーカーから情報を入手して割と真剣に教えてくれます。大抵はWTI先物のインデックスを引っ張ってきて、「1バレル=$100目前で、原因は需給・地政学的リスク・先物市場への資金流入の3つあり、下がる可能性に賭けるのは止めた方がよろしいかと」という説明になります。資金流入の話には、「サブプライムローン問題で行き場を失った資金が商品先物市場に流れ込んでいる」というおまけがつきます。

僕は偏屈なので聞きながら、「あれ?」と思ってしまった。

1.先物市場の機能って価格の安定じゃないの?
先物市場というのは、一般的には、外野の人がリスクテークする事で、異時点間の裁定がなされて現物の価格変動を滑らかにするものではなかったのだろうかと。商品先物市場に参加する人は、決済日に値下がりして大損こくか、現物抱えて死亡宣告を受けるような真似はしたくないはず。すなわち、資金流入はあくまで「需給要因・地政学リスク要因」の二つをにらんで真剣に将来の価格予測をした結果であり、現在のWTI先物が予測より安ければ買い、高ければ売りとなり、資金流入というのは価格上昇の「原因」の一つではなく、「この2つの価格上昇の予測がそれなりに合理的であるが故に買う人が増えている」事で生じた「結果」に過ぎないのではないかと。

もし、資金流入要因だけで価格が上昇するのであれば、すなわち「商品価格は物凄い勢いで単調増加を続ける」という期待が市場参加者全員で合意され、お互いに転売し続ける事で価格が上昇していくような状況という事になる。それはそのままチューリップバブルや土地転がしと同じであり、バブルが生じているという事になる。つまり、資金流入要因を取り上げるという事は、それがバブルであり、いずれ暴落に転じるであろう事を示唆しているのと一緒ではないかと。

もちろん、先物市場参加者の「その時点での合理的予想」は、現在わかっている情報に基づくものであり、その予測が外れたり、あるいは状況が変わったりする。それがショックと呼ばれる現象だ。予測が徐々に移り変わっていくと、「織り込み済み」となり、ニュースが発生した時点でむしろ相場は反転する。そういう変化は起きるかも知れないが、先物市場の資金が多ければそれなりに変動は均され「織り込み済み」が増え、逆に少ないと先物市場もピーキーになるのではないかなと思う。

2.サブプライムローン問題?
サブプライムローン問題でおきているのは、マクロ的な信用収縮(クレジットクランチ)であって、「どこからどこにお金が動く」という相対的な資金移動ではないのではないかと思う。要するに、みんなが一気にお金がなくなってしまう状態。借入金利が上昇して、先物市場にお金を入れるにはより大きな裁定チャンスが必要になる。すなわち先物市場への資金流入は減るのではないか?サブプライムローンWTI先物価格の上昇の理由としては不適当なのではないかと思う。


僕は金融論系は全くやっていないので、これこれの定理によりみたいな裏づけを持って確信をもって主張する事は今の時点ではできないんだけど、こういうものではないかと思う。

まあ、価格が上昇する理由が2つだろうと3つだろうと、サブプライムローン問題がどう関係してこようと、現状で$90以上に貼りついているのは確かだし、石油製品の値上げには他にも大きな理由がある*1ので大勢には影響ないといえば無い。けど、「世界的な資金移動が・・・」という説明を聞くたびに、これからも「あれ?」と思い続けるんだろうなぁ。しばらく考えてみて確証が持てたら個人的NGワード*2に認定しちゃうかも知れない。

*1:石油元売・石化など上流メーカーの寡占体制の確立

*2:この単語を使って説明をした時点で論者をトンデモ認定する、僕なりの基準