円高差損?

円高差損で自動車メーカーなど主要輸出製造業が軒並み赤字化するらしいが、一つだけわからない事がある。

この原油高で内需系の企業は、お客さんに相当頭を下げながら結構頑張って値上をした。その結果、値上に成功したところは収益を維持し、できなかったところは収益が悪化した。そして、できなかった*1企業のうちのいくつかの企業は倒産した。彼らは「自己責任である」と言われているし、実際そう思う。

為替差損益には、当然、予約がらみの金融的損失もあるのだろうけど、例えばサイゼリアみたいな失敗話は聞こえてこない。海外子会社への貸付金(売掛金を含む)や子会社株式の評価損はあるのかも知れない。

実際に車の売れ行きは悲惨な状態になっているらしいので、工場の固定費負担がのしかかっているのかも知れない*2。下請け企業の話を聞いていると、相当に深刻な情況だというのは、理解できる*3

が、それでも赤字予想額を聞いていると「輸出品のドル建て価格の値上げは見込んでいるのだろうか?」と思わざるを得ない。

海外での市場価格が上昇したら、売れ行きが悪くなるのは当然だ。しかし、日本車・日本製家電は発展途上国の製品と比較したらずっと高付加価値商品じゃなかったのかな?多少の価格競争には打ち勝てるだけの、品質と機能とランニングコストの低さを持ち合わせいるんじゃなかったのかな?高額所得層ほど台所が悪化しているとはいえ、需要の価格弾力性がそこまで高いとは思えない。

あるいは、製造業は世界中に工場を持って、国際的な調達をし、国際的に製造を分担することで為替変動に強い体質を作っていたのではなかったのかな?たかだか法人税くらいの金額*4で本社を移転してやるぞと脅しをかけるくらい、国際化していたのではないのかな?

いや、これらはきっと、景気情勢の急激な悪化に際しそういった恒久的な対策は間に合わないと判断して、先行してとりあえず出来る対策をやっているとか、あるいはマスコミフィルターで漉しとられてしまって情報がないだけなんだろうけど、なんか報道を聞いていると、外国市場でのシェア維持のために安価な価格を継続しているのが赤字の主因で、その損失をカバーするために日本で経費節減と称して派遣カットとか工場停止とかそういった事が行われているように聞こえてならないのだ。もしかして、生産調整を行って、品薄感を出してから価格上昇というシナリオなのかな。そんな悠長な情況じゃないから派遣カットとか役員報酬返上とか交際接待全面禁止とかになっているんだと思う。

本当のところはどうなんだろう。なんか、断片情報だけしか与えられていないので、考えが右往左往してしまっている。

いや、もちろん過度な円高は歓迎していないし、長期的には国内の製造業は海外にシフトしていくのだろう。また、為替介入経由のリフレーションは断固として必要だと思っている。ただ、だからといって、彼らは彼らなりに筋を通すべきじゃないかと思う次第であります。

p.s.
本日は日銀のゼロ金利に逆戻りネタのエントリーが多そうなので、ちょっと変化球目に。

*1:やろうとしなかった

*2:12月の昨対が50%とからし

*3:特殊な試験の受注なんてやってる会社では12月の売上がゼロになる見込みだそうだ。別の会社では予定されていた設備投資が全部キャンセルになって当分の間白紙状態だとか。期限内でとりあえず継続雇用されている派遣社員も、派遣先で全く仕事が無くてラジオ体操して時間潰しているだけとか。

*4:今回の赤字転落の幅から見たら小さい額です