大型台風上陸
昨日、東京で業界の集まりがあったわけですが、目の前に見えている明らかな景気後退に対して「我々も改革をしなければならない」なんて言う人がいて、心の中でちょっと毒づいていました。
今回の景気後退は喩えるなら、今は大型台風の直撃を受けているようなものです。それぞれの家によって、事前に台風の備えに差はあると思うけど、台風が来てから、慌てて屋根に上って修理を始めたり、食料が足りないからとカップラーメン買出しに出かけたり、そんな事をしたらかえって危険なだけですよね。こういう時は、せめて立て付けの悪い所を若干補強する程度にとどめて、雨漏りがしたらバケツを並べて、できるだけ部屋にこもっておとなしく台風が過ぎるのを待つだけです。その時点で倒壊するような家に住んでいたら、諦めて近くの公民館に逃げ込むしかありません。何せ天災ですから。
というわけで、今までのビジネスモデルが間違っていたわけではないと言う自信があれば、変に改革なんていうリスクを犯す必要はないと思います。急に改革とか言い出すのは自信喪失の裏返しにすぎない。台風が来たと思って、台風一過を待ちましょう。というのが、22日のエントリーでした(補足)。
自動車産業も、「ガソリン車時代の終焉」だとか、「自動車というビジネスモデルが破綻している」とか言う人がいますが、そんな大げさな話じゃないと思うんですよ*1。一方、国内自動車メーカーも工場を一時操業停止しているわけでして。北米・欧州市場という全体の70%くらいの市場が金融危機で車を買えない情況に「突然」なったわけです。製造ライン上で粛々と生産されて続けていた*2自動車の在庫が大渋滞を起こしてしまったので、生産調整に入ったという状況なわけです。要するに在庫循環です*3。サプライチェーンがしっかりしてるトヨタあたりは在庫バッファとして使えるストックヤードをあまり持っていないんじゃないかな。それで出口が詰まったら入り口から全部停めないとあふれちゃう*4。昔は一般道を信号で走ったり止まったりしていたのが、今の時代だと普段は高速道路を巡航していて、目の前にハザード点滅している渋滞末尾が見えたので急ブレーキかけたような情況になっているのかなと思う次第です。
とはいえ、これが単なる在庫循環で終わるのか、それとも、更に進んでいわゆるデフレスパイラル様の症状を呈するのかは、まだ未確定です。現在はどちらかというと派遣のカット・工場の停止など比例費の削減です。工場の閉鎖*5、本社機能の削減、その他諸々、売上規模が縮小していく前提で製造業が固定費の削減を進めていくと、スパイラル化していく可能性があります。在庫循環が終了した時点でちょっと操業率を下げた程度で生産が再開できるのか、あるいは顧客の購買力が早期に回復すると判断できるのか、あるいはその期間が長引いて自社が倒産するリスクが生じてくる事を見越して先に生産設備の廃棄に入るのか、その辺が分かれ目かなと思います。つまりは、まあ、金融危機がどこで底を打つのかですね。
こういう時こそ、金融緩和・特別融資の類の金融面での対応はもとより、需要減が一定期間で収まる事を納得させるための財政面の対応が必要になるのかなと思います。ぶっちゃけケインズ「一般理論」そのままですね*6。